無軌条電車通信

2025-04-16
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私のEV前史


中学時代ご近所さんだった鉄道雑誌写真担当の影響から,雑誌社で働くことにしたから高校は行かない,高校に入学してから考えが変わり,写真家の小僧になりたいと親を困らせたものでした. 回り道をしつつ写真家稼業に入ったのは1989年でした.
この歳になると小僧などやっている暇はない,アメリカを舞台に仕事をするぞ(!)といきごんで,9年働いていただいた退職金を元手に,カミさんと北アメリカ(アメリカとカナダ)をレンタカーで駆け巡りました. この間ノースカロライナでは後世に名を残すハリケーンヒューゴとガチンコしてしまい,車内で目覚めたら前後を倒れた巨木で塞がれていました. 巨木がスローモーションムービーのように倒れたそうですから気づかなかったのでしょう. まさに危機一髪です.
同じ旅である日の夕方モーテルに入ると,TVがサンフランシスコの大地震を報道していました. サンフランシスコへは翌日入るタイミングでしたが,予定していたホテル(パウエルホテル)に連絡すると,大丈夫だからお越しくださいとのことでした. TV報道が最悪の画像を流すのは万国共通ですが,実際に橋が落ちて建物が倒壊する様を見ると,大変なところに来てしまったと思ったものです.
サンフランシスコは1906年にも大地震を経験しており,その時の教訓から犠牲者を前回の地震の1/100に抑え,壊れた建物もその後の耐震基準適用前のとても古い建物と聞かされました. しかし新車のレンタカーを25000kmの旅で,2台も立派な中古車にしてしまいました.

前置きが長くなりましたがこの旅の途中に立ち寄ったスーセントメリー(Sault Ste. Marie)のショッピングセンターに,GMが試作した電気自動車のカットモデルが展示してありました. シャーシーと駆動メカニズムのみですがシンプルで驚きました. 駆動系統は必須のべべルギヤー(デファレンシャルギヤー)を介してモーター軸が車軸と平行になっており,非常にコンパクトです. シャーシー中央長手方向,左右座席を分けるバッテリーの配置は重量バランスが良さそうで,容量さえ解決されれば近未来の自動車になりうると直感しました. 3/12に『私のEVことはじめ』と題するページをまとめましたが,思い返すとこの時が本当のこと始めでした. のちにGMの電気自動車について詳細を知ることとなりますが,シンプルで理想に近いレイアウトは,1989年に存在していたことになります.

舞台は翌1990年の東京に移ります. 場所は都営バスの目黒営業所,むかし都電の車庫だったところです. 人々が集まり, バスの車庫に似合わない雰囲気です. 写真家稼業初めてほどなくスケジュールもユルユルだったので,何ごとかと立ち寄りました ↓



すると品川区の電気自動車がバスの車庫でお披露目をしていたのです. すでにこの時ボディにはEVの文字が見られます. ベースはダイハツのハイゼットです ↓


電スケのニックネームをちょうだいしたEVを担当者が説明し,ひとりずつ車庫内を試乗させていました. 飛び入りの私も順番に加えてもらえる古き良き時代のお話です ↓


越後交通式の,エンジンを外したところにモーターを据え付け,ミッションはそのままでギヤーチェンジもできます. 通常は4速だけで良いとのとですが,坂道では必要に応じて3速や2速も使うとのことです. 4速だとアクセルを床まで踏んでもSL並の出足ですが,2速だとジェットカー並の加速となります. 前年見たGMの電気自動車の話をしましたが,それで動くの(?)と,質問を受けることに. 動いたのを見ていないので,わかりませんとしか返事できませんでした. この段階で,実籍を積んだ日本式の方が安心できるなと思ったものです. 今もそのように思う老舗自動車メーカーが,ドイツや日本にあるようですが,そのままでは間違いなく脱落するでしょう ↓


思い返せばこれが本当に初めてハンドルを握ったEVでした. 今は博物館にいるのだろうか,それともリサイクルされて来世も自動車かなと考えると,開発のドラマを感じます.

余談ですが2001年の9-11テロの時も,私どもはアメリカにおりました. この時はデポのお客さんと6人で五大湖周辺をさまよっていましたが,シカゴ周辺に滞在中に事件が勃発し,帰りの飛行機が飛ばず,シカゴ〜ニューオリンズを経由してヒューストンから帰還しました. この時全国の飛行機が1週間以上まったく飛ばず,非常事態下にアムトラックは航空券を見せれば乗車でき,列車は大増発でした. 廃車された筈のハイレベル客車も戦列に加わってシカゴに現われ,アセラ急行の客車がアムフリート編成に組み込まれると言う柔軟ぶりでした. 臨機応変なアメリカ人ですが,今回の親分の暴走には,悩みはてています.
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